去年, 「日本語を読むための漢字辞典」 掲示板で話題になっていたアッチョロベツ(釧路町の地名)の漢字について, 日本に帰省したときにすこし調べてみたが, よくわからなかった。
アッチョロベツ(アチョロベツとも)という地名は現在は存在せず, 「城山」という名前になっている。 第二次大戦中に今の名前に変わったようだ。 しかし, 観光客用とおもわれる地名看板ではこの地名が漢字 3字で書かれており, その 1字めが「鶴」の左側+「契」のように書かれているという。 (『又飯時』はどう読む? などに看板の字が載っている)
調べたかぎり, この地名が漢字で載っているのは 『釧路町史』(1990) のみであった。 この本では, 「嬰寄別」という漢字がつかわれていたが,
昭和一〇年調査の「昆布森村土地整理図」によると、 アッチョロベツは、 「鸚寄別」 「[契鳥]寄別」 という漢字で表わされている。(p.122)
とも書かれている。 [契鳥]の字は大漢和辞典 47117 に見えるが, 「ア(ッ)」と読めそうにはない。 釧路町の地名には漢字を見ただけではどう読むのがわからないものが多いが, 漢字そのものは常用の字を使うのがふつうなので, この字は「鸚」の見まちがいかなにかではないかとおもう。 そして, 問題の「鶴の左側+契」は, この「契+鳥」を「楔」か何かの字の右側と「鶴」の右側の切りはりで表現しようとして, 左右をまちがえたものではないかと想像される。
山田秀三『北海道の地名』(北海道新聞社 1984) では, 釧路町の地名にあてられた難読漢字について指摘しているが, 「アチョロベツ」(p.262)はカタカナのみで記し, アイヌ語 achi-oro-pet 由来かとするが, 決定的なことは言っていない。 『北海道の地名』(日本地名大系1, 平凡社 2003)でも アッチョロベツ(p.1477)はカタカナ表記のみ。
なお, 明治2年の『改正北海道全図』という地図を見たが, 仙鳳趾・尻羽岬・跡永賀・昆布森・桂戀などの大地名は漢字になっているものの, サルキウシ・ホントマリ・キトウシなどの小地名はカタカナで書かれている (ざんねんながらアッチョロベツは載っていなかった)。 おそらく釧路町の小地名に今のような漢字があてられたのは, もっと後のことなのだろう。
投稿時刻 2006-01-25(甲寅) 18:24 於 言語::漢字 | コメント (0)