王力の「La romanization interdialectique」(了)

王力の区際ローマ字について, いままで「いろいろ」に書いた記事をもとに追加訂正して, 「王力ローマ字について」 というページを作ってみた。 論文を書いているわけではないので, とりあえずこんなもので良しとしよう。

ローマ字つづりは, さきに 「王力の「La romanization interdialectique」(4)」 で書いたものに, さらに一箇所修正をくわえた。 泰韻を (u)ai にするのではなく, oi とも ai とも異なるという意味で åi と書くことにした。 日本漢字音に関するかぎり, oi だろうが ai だろうが大したちがいはないのだが, このほうが, ほかの方言(呉語・粤語など) との対応関係がわかりやすくなる。 日本国憲法前文 では XUAIX(会)を XUÅIX に, LAIX(頼) を LÅIX に変更する必要がある。

投稿時刻 2008-01-17(丙辰) 02:01言語::ローマ字 | コメント (3)

王力のローマ字検索CGI を作ってみた

ローマ字の一覧表を作ってみたら, 多音字がたくさんありすぎて, 実用に供しがたい。

そこで, 表に注釈欄を追加して, 多音字の使いわけなどの説明を書くことにした。 また, めったに使わない音は表から除去して, その旨を注釈で説明することにした。 ところが, この作業に時間がかかってしまい, 五十音順でまだ「ち」のあたりをうろうろしている。 年内には作業が終了しないかもしれない。

そこで, 景気づけに, 「常用漢字の王力ローマ字検索」 というのを作ってみた。

いそいで作ったので, まだバグがあるかもしれないが, 漢字・音よみ・王力ローマ字のいずれかで検索できる。

なお, 同じローマ字つづりになる漢字がもっとも多いのは「ghi」で, 「岐奇祈幾期棋旗騎碁」 の 9字がある。 広韻の小韻を全部書きわけることができれば, 「岐」(支韻四等), 「奇騎」(支韻三等), 「期棋旗碁」(之韻), 「祈幾」(微韻) は異なるつづりになる。

投稿時刻 2007-12-10(戊寅) 03:50言語::ローマ字 | コメント (2)

王力の「La romanization interdialectique」の例

例によって, 日本国憲法前文をローマ字化してみた。 漢語のみ王力式ローマ字(大文字で記した。 ベトナム語正書法に似せて, 漢字1字ずつでわかち書きしてある), それ以外を訓令式で記してあるが, なかなか読みづらい :-) 慣れればすらすら読めるようになるのかなあ。

GNIT BUNV GUEK MIN wa, DCHINHX DONG ni SÜANV GIUV sareta GUEK XUAIX ni okeru DHOIX BIAOV DCIAV o TUNG zite XANH DHUNGV si, warera to warera no TZIV SUN no tame ni, DCIU GUEK MIN to no XIAP XUO ni yoru ZCINH GUOV to, waga kuni DZÜAN TUV ni watatte DZIX YIOU no motarasu XÜAIX DHJAC o KAK BAUV si, DCINHX FUV no XANH WI ni yotte hutatabi DCIANX ZHANH no TSOMV XUOV ga okoru koto no nai yô ni suru koto o GÜAT IX si, koko ni DCÜV GHÜAN ga GUEK MIN ni DZUN suru koto o o SÜAN NGIAN si, kono HIANX FAP o KAK DHINHX suru. Somosomo GUEK DCINHX wa, GUEK MIN no NGIAM SÜK na SINX TOK ni yoru mono de atte, sono GHÜAN UI wa GUEK MIN ni YIOU LOI si, sono GHÜAN LIK wa GUEK MIN no DHOIX BIAOV DCIAV ga kore o XANH SHIV si, sono FUK LIX wa GUEK MIN ga kore o HIANGV ZCIOUV suru. Kore wa GNIN LUIX PUV BIANX no NGÜAN LIV de ari, kono HIANX FAP wa, kakaru NGÜAN LIV ni motozuku mono de aru. Warera wa, kore ni FANV suru IT TSIAIX no HIANX FAP, FAP LINHX oyobi DCIAOX TJIK o BHAI DHJIU suru.

GNIT BUNV GUEK MIN wa, XENG GIOUV no BHINH XUO o NIAMX NGÜANX si, GNIN GAN SIANG XUX no GUAN GIAIX o DCI PUOIX suru DCHUNG GAU na LIV SIANGV o hukaku DZIX GAK suru no de atte, BHINH XUO o OIX suru DCIU GUEK MIN no GUNG DCHINHX to SINX NGIX ni SINX LAIX site, warera no ON DZÜAN to SHANH DZUN o BAUV DHJI siyô to GÜAT IX sita. Warera wa, BHINH XUO o YUI DHJI si, DCÜAN DCIAIX to LIAIX DZIUNG, AP BAC to PIAN XAP o DHIX ZCIANGX kara JÜNHV JÜANV ni DHJIU KIUX siyô to tutomete iru GUEK TZIAIX DCIAV XUAIX ni oite, MINH YIU aru DHIX WIX o simetai to omou. Warera wa, DZÜAN CIAIX GAIX no GUEK MIN ga, hitosiku KIUNGV PUX to KÜAT VAP kara manukare, BHINH XUO no uti ni SHANH DZUN suru GHÜAN LIX o JIOUV suru koto o KAK GNINX suru.

Warera wa, izure no GUEK GA mo, DZIX GUEK no koto nomi ni DCÜAN NIAMX site TO GUEK o MVU ZCIX site wa naranai no de atte, DCINHX DHJIX DHAUV DEK no FAP TZEK wa, PUV BIANX DIC na mono de ari, kono FAP TZEK ni sitagau koto wa, DZIX GUEK no DCÜV GHÜAN o YUI DHJI si, TO GUEK to DUOIX DENGV GUAN GIAIX ni tatô to suru GOK GUEK no ZHAC MVUX de aru to SINX zuru.

GNIT BUNV GUEK MIN wa, GUEK GA no MINH YIU ni kake, DZÜAN LIK o agete kono DCHUNG GAU na LIV SIANGV to MUK DIC o DHOT ZCINH suru koto o tikau.

1字に複数の読みがあるものは, おおむね意味にあうようにしたが, 決めかねるものもあった(「無視」の「視」は上声か去声か, など)。 「関係」の「係」は中国語から考えると XIAIX だろうが, 広韻に GIAIX の音しか載っていないので, GIAIX にしてある。

投稿時刻 2007-11-12(庚戌) 02:52言語::ローマ字 | コメント (2)

王力の「La romanization interdialectique」(5)

さて, このローマ字と日本漢字音との対応を取ってみる。 歴史的な音とくらべては実用にならないので, 常用漢字表の読みとくらべてみることにする。 とうぜん歴史的かなづかいは無視し, 現代日本漢字音を訓令式ローマ字で表記することにする。 その(3)で漢音うんぬんと言ったのは撤回する。 もっとも, 規則的に対応する部分をぬきだしていけば, 「おおむね漢音」にはなるはずだ。

ローマ字つづりのもとになる音は, 原則として広韻から取ることにするが, 問題は常用漢字にあって広韻にない字が 20字ほどあることだ。 これらについては, 以下のように決めた。

  1. 磁 dzi: 広韻では「礠」に作る。古くは「慈」にも作る。
  2. 耗 haux: 広韻「秏」字の説明に「俗作耗」とある。 なお「秏」には huoix 音もあるが, こちらは説明に「稲名, 出南海」とあり, 意味が異なる。 慧琳音義には呼告反(=減, haux)と莫報反(=耄, maux)が見える。
  3. 搾 zhax: 本字の「榨」が広韻にあるので, その音を用いる。
  4. 砲 paox: 本字である石偏に駮の字(U+792E)が広韻にあるので, その音を用いる。なお「炮」も同音。
  5. 様 yiangx: 広韻に見えず, かわりに手偏の字(U+3A3E)がある。 完本王韻も同様。慧琳音義は羊尚反。
  6. 臓 dzongx: 集韻で才浪切。周礼(天官疾医)には「蔵」に作る。
  7. 拷 kauv: 慧琳音義に「考」と同音とする。
  8. 擦 chat: 漢語方音字匯は「山開一入曷清」(tsot) とするが, 何によったものか不明。 慧琳音義に「刹・察」と同音とある (ただし梵語の音訳字なので意味は不明。 また広韻で刹と察は正確には同音でない)。 大漢和は篇海を引くが, 初戛切とあり, やはり「察」と同音。
  9. 週 dciou: 「周」にしんにょうをつけた字で, 「周」と同音のようだ。
  10. 痘 dhoux: 古くからある字ではないらしい。 大漢和は字彙の大透切を引く。 「豆」と同音。漢語方音字匯も同様。
  11. 賠 bhuoi: 古くからある字ではないらしい。 大漢和の引く字彙は裴と同音とする。 漢語方音字匯も同様。
  12. 礁 tziao: 古くからある字ではないらしい。 日本でも中国語でも「焦」と同音に読んでいるので, とりあえず「焦」とおなじつづりにしておく。
  13. 塀 bhinh: 「屏」に土偏をつけた字。 「屏」は binhv/bhinh/binh の 3音があるが, binhv は動詞(しりぞける), binh は「屏盈彷徨(『国語』「屏營仿偟」のこと?)」 という熟語専用なので, bhinh でいいだろう。 龍龕手鑑に「塀(必郢反)」とあるが, 意味を記さず。 これに従えば binhv。
  14. 働 dhungv: 「動」に人偏をつけた文字。 「動」とおなじ音とかんがえればいいだろう。
  15. 「込峠畑岬匁枠」 6字は常用漢字表に音読みがのっていないので, 考慮の外に置く。

また, 広韻に字は載っているが, 音が不適当の場合な場合もある。 下の一字だけ広韻と変えた。

  1. 拡 kuok: 広韻は乎曠切(xuongx)で, 攩(広雅云搥打也) と同字とするが, 音も意味も合わない。 漢語方音字匯が「宕合一入鐸渓」とするのに従う。
    追記: 孟子に「拡而充之」の語あり, 趙岐注は「拡」を「廓(kuok)」と読ませる。 通常この字は説文に「彉, 弩満也。読若郭」という 「彉」と同字であると考えられている。 「郭」は guok であるが, 大徐本の反切は苦郭切で kuok。 広韻は「彉・彍」に xuok, guok, kuok の 3音を与える。

「沸 fix」「娯 ngü」なども日本漢字音と合わないが, 中国語音とは合うので, このままとする。
「娯」については広韻に ngux の音もあるので, 上は訂正する。

投稿時刻 2007-11-12(庚戌) 00:58言語::ローマ字 | コメント (0)

王力の「La romanization interdialectique」(4)

王力の方式をなるべく尊重しつつ, 以下のように修正を加えてみよう。

  1. 王力は, 于母と羊母をともに y としているが, これでは「雨」と「癒」が同じつづりになってしまうので, 于母のほうを j に変える。
  2. 陽韻合口(üang) は, 于母のときのみ直音に変え(jüang → wong), 「狂 ghüang」はそのままとする。
  3. 止摂合口の于母・羊母については, 王力の例が「為 wi」しかなく, どのように考えていたかわからないが, 陽韻と同様に于母のときのみ直音に変えることにする。 すなわち, 「胃」は juix でなく wix とつづるが, 「唯惟維遺」は yui のままとする。
  4. 梗摂はベトナム語のつづりなどを勘案して, 「anh inh uanh ünh / ac ic uac üc」 に変える。 曽摂は基本的にそのままとするが, 職韻合口は「iuk」でなく「uik」にする。 そのほうが開口の「ik」との つりあいもよくなる。
  5. 魚韻を「iu」, 鍾韻を「iung / iuk」に変える。 虞韻「ü」, 東韻三等「üng/ük」はそのまま。
  6. 明母尤韻(謀・矛)について, 王力がどう考えていたかわからないが, mou とつづることにする。 明母幽韻(謬・繆)は miou とする。 明母侯韻の字(母・茂・畝・戊・某・貿)は, mou とする。 現代音との対応が一対一でなくなるが, やむをえない。
  7. 「夢」は mung(x), 「目」は muk とする。

重紐はとりあえず区別しないままにする。 声母はもっと簡素化できると思うが, とりあえず変更はこれだけとする。

さきに書いた正歯音二等(zh ch dch sh)拗音の直音化(止摂・深摂をのぞく) の問題だが, うまい処理方法を思いつかなかったので, 王力のままとする。 上に書いた「魚・虞」「東3・鍾」の区別もつかなくなるので, 日本漢字音との関係において, 「数・崇・縮」がおかしくなる。 たとえば 「模mo・初cho・魚ngio・数shux・虞ngü」, 「通thong・恭giong・崇dchung・弓güng」 のように書きわけられればいいのだが, o/ong が別なところに使われているので, そうできない。 ほかに「愁・生・牲・栓」も不規則になる。 むしろ拗音のままにしておいたほうがいいかもしれない。 なお, 直音か拗音かを 1字ごとに記憶する必要が生じるが, これはつづりかたと関係なくそうなるようだ。

投稿時刻 2007-11-12(庚戌) 00:24言語::ローマ字 | コメント (0)

王力の「La romanization interdialectique」(3)

このローマ字をローマ字書き日本語文の漢語部分をつづるのに応用できないものだろうか, と思い, まず中古音との関係が比較的単純な漢音についてかんがえてみたが, 問題が多い。 中古音と日本漢音の対応関係自体にゆれがあるものや, 例外的な対応については, たとえば英語で go と to の o の発音がちがうように, 個別におぼえるしかないだろうが, 王力の方式のままではまずい点がいくつかある。

  1. 梗摂と曽摂をともに「eng ing ueng iung」として区別しないが, これではたとえば「霊」と「陵」がともに ling になってしまう。 漢音では両者を区別するのでまずい。
  2. 魚韻と虞韻をともに「ü」, 東韻三等と鍾韻をともに「üng」とするが, たとえば「宮」と「恭」がともに güng になってしまう。 これらは漢音では区別するので, おなじつづりにしては, まずい。
  3. そり舌音(正歯音二等)+拗音は直音になおしてつづるようだが, 「崇・疎・霜」などはいいとして, 「色・愁」は漢音で拗音でないとまずい。 そのほか, 「生」が sheng になっているが, これだと漢音がソウ(サウ)になってしまう。
  4. 「狂」を kuong にしているが, これは「曠」と(声調以外)おなじつづりになってしまうので, 漢音がコウ(クワウ)になってしまう。
  5. 重紐を区別しない。 呉音では区別があるので困る。 漢音ではさいわいほとんど区別されないが, それでも「クヰ」と「キ」, 「ヰ」と「イ」の区別などに関係する。 もっとも歴史的仮名遣いを無視すれば, 問題なし?

また, 王力の説明が簡単すぎるのと, 中途半端に新しい音をつづりに反映させているため, 中古音がわかってもどうつづったらいいのかわからないものが存在する。 たとえば「母・茂・畝・牡」などはどうすべきだろうか。 「母」は広韻にしたがうのなら mouv だろうが, 唐代長安音にしたがうのなら muv にした方がいいだろう。 なお, 尤韻の唇音については「浮 vou」(p.647)のように, (虞韻でなく)侯韻に入れるようだ。

もうひとつ, 一字に複数の音があるとき, どちらを使うかという問題があるが, 王力は何も言及していない。 とくに, 現代日本語の漢字音では声調を区別しないが, おなじ字が意味によって声調をかえることがよくあるが, ローマ字日本語文に王力方式を使った場合, こういう声調のちがいまで意識して書きわけるべきだろうか。

おなじ問題は中国語を記す場合にも起きる。 たとえば「上」という字は動詞「のぼる」のとき去声, 「うえ」を意味するとき上声だが, 中国語現代諸方言では同音になってしまっている場合が多い。 p.647 では「うえ」の意味と「のぼる」の意味の「上」をともに zciangv (上声)とつづっているが, これが意図したものなのか, ほかにも多くある誤りのひとつなのか, よくわからない。

投稿時刻 2007-11-08(丙午) 03:20言語::ローマ字 | コメント (2)

王力の「La romanization interdialectique」(2)

王力のこの文章には ひどく誤りが多いのが残念だ。 気がついたものをリストアップしてみると:

  • p.642 「餐 tzon」は tson の誤り
  • p.644 「坡 po」は, puo だろうか? 意図的に po にしたのかもしれないが, 広韻の戈韻唇音の字はこれしか載っていないので不明。
  • p.644 「垂 dscüi」は zcüi の誤りだろう
  • p.645 「大 dhai」, 「蓋 gai」はそれぞれ dhaix gaix の誤りだろう。 ただし p.648 にも「大 dhai」が出てくる。
  • p.645 「坑 kheng」は keng の誤り。p.648 では keng になっている
  • p.645 「琴 ghin」は ghim の誤り
  • p.645 「卣 xam」は「咸」の誤植だろう
  • p.645 「厳 ngian」は ngiam の誤り
  • p.646 「学 hak」は xak の誤りだろう
  • p.646 「或 wek」は xuek の誤りだろう
  • p.646 「叶 yiap」は「葉」の簡体字がまじったものか
  • p.646 「短 duon」は duonv の誤り
  • p.646 「文 dhjiangv」は「丈」の誤り
  • p.647 「餓 gnox」は ngox の誤り
  • p.647 「告 gau」は gaux の誤り
  • p.647 「対 duoi」は duoix の誤り
  • p.647 「弄 lüngx」は lungx の誤り
  • p.647 「林 lin」は lim の誤り。ほかのページでは lim になっている
  • p.647 「晩 mvan」は mvanv の誤り
  • p.647 「霜 shang」は shong の誤り。 p.645 と p.648 では shong になっている。 「瘡」も chong だ(p.644)
  • p.647 「月 gnüat」は ngüat の誤り
  • p.647 「但 dhanx」は dhonx の誤り
  • p.647 「増 sheng」は tzeng の誤りだろうが, なぜこんな誤りをしたのか不明
  • p.648 「班 pan」は ban の誤り
  • p.648 「宣 s'üan」は süan の誤り
  • p.648 「朱 tcü」は dcü の誤り
  • p.648 「同 dhong」は dhung の誤り
  • p.648 「地 dhi」は dhix の誤り
  • p.648 「候 xou」は xoux の誤り
  • p.648 「就 dzioou」は dzioux の誤りか?
  • p.648 「趙 dhjiaox」は dhjiaov の誤り
  • p.648 「茶 dhjia」は dhja の誤りか?
  • p.648 「資 tsi」は tzi の誤り
  • p.648 「諾 noh」は nok の誤り
  • p.649 「金 kim」は gim の誤り

統一のとれていないもの

  1. 去声は -x であらわすが(p.646), p.645 では「会 xuaih」 「外 nguaih」 「最 tzuaih」 「貝 buaih」 「税 cüaih」 「贅 dcüaih」 のように, -h を使っている。
  2. p.646 の「法 fap」だが, p.645 に「凡 fan」とある。 fan が fam の誤りであるか, それとも fap が fat の誤りか
  3. 「潘」は pon だが, 同韻の「盤」は bhuon になっている。 広韻ではともに桓韻なので, -uon のほうがよいか?

誤りでないと思われるもの

  1. p.646 「踏 dhop」は広韻の反切にしたがえば top だが, 慧琳音義に「蹋」の俗字(談合反)とし, 集韻に達合切とする音を採用したもののようだ。 現代語 ta4 は top のほうが合うが, 南方諸方言音は dhop のほうに対応する。
  2. 「稍」は p.645 で shao, p.648 で shau になっている。 後者は誤りだろう。 広韻では去声(shaox)だが, 慧琳音義では平声または上声になっており, 現代諸方言音も平声・上声が多い。
  3. 「不」を but としている(p.647)が, これも現代諸方言音につながる音を採ったもの。

投稿時刻 2007-11-08(丙午) 02:26言語::ローマ字 | コメント (0)

王力の「La romanization interdialectique」(1)

王力『龍蟲並彫齋文集』第二冊におさめる「漢字改革」(もと 1938) という文に, 「区際羅馬字(La romanization interdialectique)」 または「文言羅馬字」 というのが出てくる。 なかなかおもしろそうだ。

「区際」も「文言」も具体的なつづりはおなじで, 基本的に中古音をそのままローマ字化し, つづりと発音の関係を方言ごとに適当に決めれば, 方言の差をつづりが吸収してくれるし, 漢文をローマ字書きしたときに生ずる同音異義語の問題も軽減する, ということらしい。 王力のあげる例だと, 「単」は北平(北京)では dan, 蘇州では te, 広州では daan だが, これを「don」と書いておいて, たとえば北平では「on は an と読む」というルールを定めればいいわけだ。 もっとも「単」ていどならともかく, 「学」を「xak」(原文には hak とあるが, 改めた)と書いて xue と読ませるのは, ちょっと大変そうだ。

例字が 457字(たしょう数えもらしがあるかも)しかなく, 説明も簡単すぎるが, だいたいは中古音をもとに, 次のようにつづるらしい。

声母

幇b 滂p 並bh 明m 非敷f 奉v 微mv 端d 透t 定dh 泥n 知dj 徹tj 澄dhj 娘nj 精tz 清ts 従dz 心s 邪z 章zc 昌tc 船dsc 書c 常zc 荘zh 初ch 牀俟dch 生sh 見g 渓k 群gh 疑ng 影(ゼロ) 暁h 匣x 喩(于羊)y 来l 日gn

ほかに w があり, 于母の「為wi 王wong」で使われている。

精から生までが特におぼえづらい。

韻母

開合 舒声等位 入声等位
1234 1234
果仮 oaia
uouaüo
oi *1aiiai
uoi *1uaiüai
auaoiao
宕江 ongangiang okakiak
uong *2 uok *2
梗曽 enging ekik
uengiung uekiuk
onanian otatiat
uonuanüan uotuatüat
omamiam opapiap
開合 舒声等位 入声等位
134 134
uü
i
üi,ui *3
ouiou
ungüngukük
eninetit
unünutüt
im ip

  • 1: ただし泰韻は開口 ai, 合口・唇音 uai
  • 2: 王wong・狂kuong のように直音化した形につづる
  • 3: üi は舌上・正歯音のときらしい。 喩母は yui でなく wi になる

さらに, 以下のルールを適用する。

  1. 声母が軽唇音(f,v,mv) の場合, 拗音を直音にする
  2. 声母が正歯音二等(zh,ch,dch,sh) の場合, 拗音を直音にする

声調

平声と入声は何もつけない。 上声は v, 去声は x を接尾する。

投稿時刻 2007-11-08(丙午) 02:07言語::ローマ字 | コメント (6)

ポロロッカ・ヨックモック

日本橋三越へ行くとちゅう, ポロロッカ食品館 の前をとおったが, 社名をアルファベットで「POROROCA」と書いているのに気づいた。 促音がつづり上にあらわされていないところが, ヨックモック の「YOKU MOKU」に似ている。

公式サイトによると, ヨックモックは Jokkmokk というスウェーデンの町の名前に由来するそうだ。 ポロロッカはアマゾン河口の逆流現象を意味し, トゥピ語に由来するらしい。

投稿時刻 2007-06-24(己丑) 11:02言語::ローマ字 | コメント (0)

ギリシア文字で書かれた文章の ASCII 転写で

すのものさんのいろいろ 「欧文では Y2K のような略語などを除けば数字と文字とは並ばない?」 をみておもいだしたこと。 ギリシア文字で書かれた文章をローマ字に転写する方法はいろいろあるが, むかし η と ω をそれぞれ 7 と 3 (だったとおもう)でうつすものをみたことがある。 いまもこの方式が使われているのかどうか知らない。 おぼえやすくていいが, 定冠詞の「η」のように単独で単語になると, ただの数字を見わけにくいのが欠点だろう。

Perseus Project では ê ô をつかっているが, ユーザーの入力では h と w を使うようになっている。 いっぽう帯気音の φ θ χ の入力には f q x をつかうことになっているが, 伝統的な ph th kh/ch もつかえるので, 「πη」が入力できないなど, かなりおかしなことになっている。

ついでに, X-SAMPA という ASCII のみをつかった IPA の代用表記では, 前舌円唇母音の ø œ をそれぞれ 2 9 であらわす。 おそらくフランス語の deux(2) と neuf(9) の母音にこじつけたものだろう。

(なお, この記事では「転写」は transliteration を意味しているものとする)

投稿時刻 2005-06-21(丙子) 09:11言語::ローマ字 | コメント (9)

山田忠雄のわかち書き

新明解国語辞典を読む役人批判の原点 に, 三省堂『音訓両引き国漢辞典』が引かれているが, 文部省方式ともことなる独特のわかち書きがつかわれている。

てもとに新生社の古辞書叢刊2『元和三年板下学集』(1968)がある。 この叢書の「刊行の辞」も, 解説(248ページある)も山田忠雄によるもので, こちらは新漢字・旧かな・わかち書きだ。 「……てゐる」「……として」「……である」「……について」「……において」 などをつなげて書くところに特色がある。

投稿時刻 2005-02-25(庚辰) 17:53言語::ローマ字 | コメント (0)

オムライスのローマ字つづり

Google で検索してみた。

  • omurice: 5170件。多くは日本と韓国。
  • omuraisu: 2410件。omurice より少ない。
  • omerice: 438件。
  • omurais: 47件。日本と韓国。
  • omulaisu: 19件。これも日本と韓国。

韓国語では「오무라이스 (omuraiseu)」というようだ。

投稿時刻 2004-12-22(乙亥) 17:00言語::ローマ字 | コメント (0)

Monierの辞書に

デーヴァナーガリーのローマ字化について。 Monier のサンスクリット語辞典の序文を読んでいたら, 1894年に Geneva Oriental Congress による Transliteration Committee が開かれたことがかいてあった。 Transliteration of Devanāgarī にも記載がある。

投稿時刻 2004-12-11(甲子) 17:00言語::ローマ字 | コメント (0)

Page 1 of 1: 1